本連載について
「ネットワーク」は、ビジネスでもプライベートでも、とても身近な存在になっています。ビジネス上、多くの企業は社内LANを構築し、インターネットに接続して業務を行ったり、新しいサービスを展開したりしています。そして、プライベートでは家庭内LANを構築し、PCやスマートフォン、タブレット、家電製品などをインターネットに接続して、いろんなサービスを利用している方も多いでしょう。
身近になったネットワークですが、その仕組みに興味を持ったことはありませんか?
- なぜ、手元のPCやスマホ/タブレットなどから世界中のWebサイトを見られるのか?
- なぜ、メールが宛先に届くのか?
- 「アドレス」といっても、Webサイトのアドレス(URL)やメールアドレス、IPアドレスなどいろんなアドレスがあるのはなぜか?
本連載は、こんな疑問を持ったことがあり、ネットワーク技術の仕組みに興味がある方に向けたものです。
ネットワーク技術の仕組みを体系的に学ぶための手段として、資格取得が挙げられます。資格取得のための勉強は、技術の仕組みを体系的に学ぶにはとても有効です。本連載では、米国の大手ネットワーク機器ベンダであるシスコシステムズ社のエントリー資格「CCENT」を主眼において、ネットワーク技術の仕組みを解説します。CCENT資格を取得することで、シスコシステムズ社のネットワーク機器を利用した比較的小規模な企業ネットワーク構築のスキルを有していることを客観的に示すことができます。
ただ、CCENT資格は、入門向けという位置付けではありますが、まったく一からネットワーク技術を学ぶには少し敷居が高くなっています。いきなりCCENT向けの参考書や問題集を読んでみようと思っても、すんなりと進めにくいと感じる方が多いかもしれません。
そこで、本連載では、CCENTの勉強を進めていくための第一歩として、ネットワーク技術の仕組みをやさしく解説します。第1回のテーマは「OSI参照モデル」です。
OSI参照モデル
一言でいうと
コンピュータ同士の通信を行うために必要なさまざまなルールや機能を階層的にまとめて考えるためのモデル。
CCENT試験でのポイント
OSI参照モデルの各階層の役割をしっかりと把握しておきましょう。
ネットワークアーキテクチャとプロトコル
コンピュータ同士の通信は、私たち人間が普段行っている会話になぞらえて考えることができます。
私たちが会話するときには、日本語や英語などの言語を利用しています。当たり前ですが、会話するには、共通の言語を使わなければいけません。そして、言語にはいろんなルールがあります。文法や文字の表記、発音などさまざまなルールを組み合わせて言語は成り立っています。言語の文法や文字の表記といったルールは、人間の思考に関わる論理的なルールです。
会話するには、論理的なルールだけでは足りません。会話を成り立たせるには、音声を相手に伝えなければいけません。音声を伝えるには、声帯で空気を振動させます。これは、文字の発音のルールです。そして、空気の振動が会話相手の耳の鼓膜を振動させます。さらに、鼓膜の振動が脳内で音として認識されます。空気の振動は物理法則に支配されています。つまり、会話を成り立たせるために音声を伝えるには、物理法則も大きく関わっています。
コンピュータ同士の通信は、同じ「ネットワークアーキテクチャ」を利用して行います。つまり、言語に相当するのが「ネットワークアーキテクチャ」です。そして、ネットワークアーキテクチャも言語と同じようにいろんなルールを組み合わせています。それらのルールのことを「プロトコル」と呼びます。
プロトコルの例として、コンピュータ同士がやり取りするデータのフォーマット(形)や送受信するときの手順、エラー時の処理などがあります。また、コンピュータ同士でやり取りするデータは、電気信号や光信号、電波などの物理的な信号に変換されて伝わります。コンピュータが扱うデータは「0」と「1」のデジタルデータです。デジタルデータをどのように電気信号や光信号などの物理的な信号に変換するかもプロトコルの例として考えてください。そして、電流など物理的な信号が伝わっていくには物理法則が関わっています。